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当ブログでは、残業代請求について触れている裁判例を紹介しています(つづき)。
第三 当裁判所の判断 一 時間外・深夜割増賃金(残業代)に係る合意の有無(争点1) 1 本件協定は、控訴人と県自交労組(徳島県自動車交通労働組合、徳島南海タクシー労働組合)との間で締結されたものであるところ、控訴人は、本件協定が締結された時点においては、被控訴人らのほとんどの者が県自交労組の組合員であったし、被控訴人らも本件協定書をめぐる団体交渉には参加し、これに合意していたと主張する。 しかしながら、証拠(〈証拠・人証略〉)によれば、控訴人の小松島営業所の廃止に伴う控訴人の減収対策として昭和六〇年一二月二一日に、乗務員の月間の責任水揚額を三〇万円から三二万円に増額することを県自交労組が合意したことに対して、二交代勤務者の多くが不満を持ち、これらの者は、県自交労組を脱退し、昭和六一年三月一九日全国一般労組の前身である徳島南海タクシー二交代勤務組合(以下「二交替組合」という。)を結成し、あるいは、本件協定が締結される前である同月末ころまでに二交替組合に加入したことが認められる。 そして、被控訴人らのうち、被控訴人山崎佳克は、同年三月末までに県自交労組を脱退して二交替組合に加入したことが認められ(同被控訴人)、また、前記事実と(証拠略)を総合すると、被控訴人中村進、同小出精二郎、同高倉吉邦、同岡本一夫、同東條康男、同丸山次郎及び同山本春重も、そのころ二交替組合に加入したと考えられるが、いずれにしてもその余の被控訴人も含め、被控訴人らが、本件協定が締結された当時、県自交労組の組合員であったと認めるに足りる証拠はない。 したがって、本件協定が労働協約として、被控訴人らに直接適用されるということはできない。 また、控訴人は、本件協定は控訴人の大多数の従業員を組合員とする県自交労組との間で締結されたものであると主張するが、(証拠略)によれば、昭和六一年四月二〇日当時、タクシー乗務員七三名中、県自交労組に所属する者が三〇名、全国一般労組に所属する者が四〇名、平成三年五月二〇日当時、同じく六六名中、それぞれ二八名、三三名であったというのであるから、当時、県自交労組に所属していたと認められない被控訴人らに労働組合法一七条が規定する一般的拘束力を認めることはできない。なお、(証拠略)には、昭和六一年三月二〇日当時、タクシー乗務員八〇名中、県自交労組に所属する者が七七名、全国一般労組に所属する者が三名との記載があるが、前記のとおり、そのころ、二交代勤務者の多くが県自交労組を脱退したことが認められるし、組合費の給料からの天引の関係で、必ずしも正確な脱退日が控訴人に届け出られていたものではないこともうかがわれるから(被控訴人山崎佳克)、右記載をもって、本件協定締結時の同年四月一〇日当時、乗務員の四分の三以上の者が県自交労組に所属していたと認めることはできない。 (なお、本件協定締結前後ころにおける被控訴人らの県自交労組への加入や脱退の状況は、本件証拠上、右に述べた以上には判然としないものの、後記2で述べるとおり、本件協定〔後に責任水揚額、賃金比率、超勤深夜手当(残業代)額が変更されたものを含む。以下、これを含めて「本件協定等」という。〕の賃金体系は、控訴人と被控訴人らの間の労働契約の内容になっていると認められるので、仮に、本件協定締結当時、県自交労組にとどまり、本件協定の適用を受ける者がいたとしても、その者についても、後記3以下の検討は同様である。) 2 しかしながら、全国一般労組は、昭和六三年三月一九日ころの前記第二、一2(二)(2)の合意及び平成三年九月二一日の同(3)の合意の際、それぞれ本件協定の賃金体系を手直しする書面(〈証拠略〉)に記名・押印しているところ、これは労働組合法一四条の要件を充たす労働協約とみることが可能であり、被控訴人らは、その当時、同組合に加入していたか(〈証拠略〉)、遅くとも本件で被控訴人らが未払賃金を請求している期間の始期までには同組合に加入したと認められるし(前記第二、一1(二))、また、被控訴人らは、本件協定等の賃金体系に基づきこれまで給与の支払を受けてきたこと、本件訴訟においても、未払割増賃金(残業代)を算出するにつき、本件協定等の勤務時間・賃金体系に従っていることなどから、本件協定等の賃金体系は、控訴人と被控訴人らとの間の労働契約の内容になっていると認めるのが相当である。 3 そこで、右賃金体系における時間外・深夜割増賃金(残業代)に係る合意の有無について検討するに、本件協定書においては、基本給八万五〇〇〇円、乗務給一万三〇〇〇円、皆精勤手当五〇〇〇円及び超勤深夜手当(残業代)(歩合割増含)五万〇六〇〇円の合計一五万三六〇〇円は、固定給である旨が記載され、定額の超勤深夜手当(残業代)が固定給に含まれることとされている。 そして、控訴人は、右超勤深夜手当(残業代)は、労働基準法三七条の時間外・深夜割増賃金(残業代)であると主張するところ、文言上は、そのように解するのが自然であり、労使間で、時間外・深夜割増賃金(残業代)を、定額として支給することに合意したものであれば、その合意は、定額である点で労働基準法三七条の趣旨にそぐわないことは否定できないものの、直ちに無効と解すべきものではなく、通常の賃金部分と時間外・深夜割増賃金(残業代)部分が明確に区別でき、通常の賃金部分から計算した時間外・深夜割増賃金(残業代)との過不足額が計算できるのであれば、その不足分を使用者は支払えば足りると解する余地がある。 企業の方で、残業代請求についてご不明な点があれば、御社の顧問弁護士にご確認ください。そのほか、個人の方で、会社都合の不当な解雇、交通事故の示談交渉や慰謝料交渉、相続や遺言の問題、原状回復(敷金返還)や多重債務の返済、家族の逮捕などの刑事弁護事件などでお困りの方は、弁護士にご相談ください。 PR |
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