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本ブログでは、残業代請求に関する裁判例を紹介しています(つづき)。
5 なお、時間外・深夜割増賃金(残業代)を固定給に含める旨の合意がなされた場合において、通常の賃金部分と時間外・深夜割増手当(残業代)の部分が明確に区別でき、通常の賃金部分から計算した時間外・深夜割増手当(残業代)との過不足額が計算できるのであれば、その不足分を使用者は支払えば足りると解する余地があることは前記のとおりであるが、本件においては、そもそも時間外・深夜割増賃金(残業代)の実質的合意があったとはいえないから、右の場合には該当しないというべきである。 したがって、時間外・深夜割増賃金(残業代)を固定給に含める旨の合意により、控訴人らに対し、同割増賃金(残業代)を支払ってきたとの控訴人の主張は採用できない。 二 信義則違反について(争点3) 控訴人は、被控訴人らが、超勤深夜手当(残業代)の合意をしながら、別途割増賃金(残業代)を請求することは、信義則に反して許されないと主張するが、本件協定等において労働基準法三七条の時間外・深夜割増賃金(残業代)に係る実質的合意があったと認められないことは前記のとおりであるから、控訴人の主張はその前提を欠くというべきである。 また、控訴人は、経営状況の逼迫を縷々主張するが、仮に、控訴人の経営状況がその主張のとおりであったとしても、控訴人が時間外・深夜割増賃金(残業代)を支払ってこなかったものである以上、これを求める被控訴人らの請求が、直ちに信義則違反になるものとはいえない。 さらに、控訴人は、被控訴人らが、賃金体系の改訂交渉に応じないと主張するが、未払割増賃金(残業代)の支払と賃金の改訂は本来別問題というべきであること、賃金体系の改訂が被控訴人らの労働条件に直接かかわる問題であり、慎重にならざるを得ない部分があることなどを考慮すると、被控訴人らが賃金体系の改訂交渉に応じないことをもって信義則違反ということはできない。 したがって、控訴人のこの点の主張は採用できない。 三 消滅時効について(争点4) 被控訴人らの請求する平成三年五月から同年八月分の未払割増賃金(残業代)については、各弁済期の翌日から起算して本件訴え提起時において二年が経過していること及び控訴人においてその主張のとおり右時効を援用したことは記録上明らかである。 よって、右期間分につき被控訴人らに支払われるべき未払割増賃金(残業代)があったとしても、この部分については被控訴人らの請求は理由がない。 四 未払割増賃金(残業代)の有無及び額について(争点5) 1 控訴人は、別紙超過勤務手当(残業代)計算表(1)(〈証拠略〉)又は(2)(〈証拠略〉)のとおり、割増賃金(残業代)の過不足額を計算するが、それは本件協定等に基づき時間外・深夜割増賃金(残業代)を固定給に含める旨の合意があったことを前提とするものであるところ、右合意が認められず、これまで控訴人が支給してきた給与の中に、時間外・深夜割増賃金(残業代)が含まれていたとはいえないことは前記のとおりであるから、控訴人の右計算は採用することはできない。 2 一方、被控訴人らは、前記第二、二5【被控訴人ら】欄記載の計算式により、別紙各未払賃金計算表のとおり計算すると、被控訴人らに支払われるべき未払割増賃金(残業代)は、別紙未払賃金明細書(一)及び(二)のとおりであると主張するところ、その基礎となる総労働時間や時間外労働(残業)時間については、控訴人が主張する別紙各超過勤務手当(残業代)表(1)と相当異なり、また、被控訴人らが主張するように所定労働時間を基にしたという同(2)とも異なる部分が存する。 そして、控訴人は、右1の主張の基礎となる総労働時間及び時間外労働(残業)時間は、チャートに基づくものであると主張し、(証拠略)ないし(証拠略)(労働時間集計表)を提出するが、それらが真実チャートに基づくものであるのかなどその作成経過等を明らかにする証拠はないから、右主張を採用することはできない。 一方、被控訴人らの主張する別紙各未払賃金計算表は、本件協定の所定労働時間を前提に計算したものである上、出勤日数、労働時間数も控訴人主張の各超過勤務手当(残業代)表(2)と対比してもそう大きな乖離はないこと、被控訴人らは原審で主張していた未払賃金合計額等を訂正したものの、その訂正は違算によるものであってわずかな金額であるところ、控訴人は、未払賃金額については原審において積極的に争っていなかったことなどを考慮すると、総労働時間数や時間外・深夜労働(残業)時間数等の基礎数値は、被控訴人らの主張する別紙各未払賃金計算表のとおりと認めるのが相当である。 そして、本件協定等の賃金体系は、実質歩合制であるから、被控訴人らの各未払割増賃金(残業代)の算定として、右基礎数値を基に、前記第二、二5の計算式により行われた別紙各未払賃金計算表の算定方法は相当であり、被控訴人らに支払われるべき未払割増賃金(残業代)は、別紙未払賃金明細書(一)及び(二)のとおりであり(ただし、平成三年五月分から同年八月分までを除く。)、その合計額は別紙債権目録の未払賃金合計(2)のとおりであると認められる。 なお、前記第二、一2(二)(3)のとおり、平成三年九月二一日付け確認書により、特別の歩合加給の合意がなされているが、これを基礎賃金の算定に算入すべき旨の主張はなので考慮しないこととする。 五 付加金について(争点6) 控訴人が、被控訴人らに前記の各割増賃金(残業代)を支払わなかった期間やその合計額、平成元年に被控訴人らが控訴人に支払を求めて以降の両者間における交渉の経過など、本件証拠上認められる諸般の事情を総合すると、労働基準法一一四条に基づき、控訴人に対し、被控訴人ら各自に対し、前記の各未払割増賃金(残業代)と同一額の付加金を支払うように命じるのが相当である。 なお、被控訴人松浦和雄及び同岡本一夫は、前記第二冒頭部分記載のとおり、それぞれ請求を減縮したが、それらはいずれも原判決認容部分の未払賃金額(平成三年九月分から同五年四月分)及び付加金額を減額訂正したことによるものである。 第四 結論 以上によれば、被控訴人らの請求は、控訴人に対し、それぞれ別紙債権目録の未払賃金合計(2)欄記載の金額及び同付加金欄記載の金額の合計額並びに同未払賃金合計(2)欄記載の金額に対する平成五年一〇月一日から支払済みまで年五分の割合による遅延損害金の支払を命じる限度で理由があるところ、原判決の認容額はいずれもこれを下回るから(ただし、被控訴人松浦和雄及び同岡本一夫については、右限度は、原判決が認容した部分から同被控訴人らが請求を減縮した残額に一致するから)、本件控訴を棄却し、同被控訴人らの請求の減縮により変更された主文を明らかにすることとし、主文のとおり判決する。 企業の方で、残業代請求についてご不明な点があれば、企業法務に強い顧問弁護士にご相談ください。その他にも、個人の方で、交通事故、解雇、原状回復義務・敷金返還請求や借金の返済、ご家族の逮捕などの刑事弁護士の事件、遺言相続などでお困りの方は、弁護士にご相談ください。 PR |
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